あなたのいない世界に興味はないわ。







「あとはお前だけだな」

そう呟いた相手は、今はもう別人とも言えるほど変わり果てた姿をしていた。
帰り血を大量に浴びた服と剣、いつもばさばさのまま一つに束ねていた髪は全て解かれていて、私が知っているはずのだらしない格好のレイヴンはそこには居なかった。
冷ややかな目を向けてくるレイヴン、いや、シュヴァーンは血をはらうように剣を振ると、ゆっくりとこちらに向かってくる。

「もう抵抗もしないのか」
「抵抗しないんじゃなくてできないのよ、」
「だろうな、その傷じゃ」

もう息をするのも辛い。 今にも大量の血が自分の中から逆流してきそうで辛い。
周りに倒れているみんなはきっとあたしより酷い傷を負っていて、生きているかどうか確認する必要もなかった。

「はやく、」

殺しなさいよ。
あたし一人が助かったって何の意味もない。
助けてもらおうとも思っていない。
抵抗する気もない。
もう苦しすぎて、苦しくてたまらなくて。

「はやく、」

苦しくてたまらないの。
痛みじゃなくて、目の前の人が振り上げているその剣がまぶしくて、苦しい。

「助けてやろうか」

今更、そんなのいらない。

「お前だけなら助けられないこともないぞ」

剣をあたしの目の前に向けるその姿さえもう掠れて見えない。

「リタ」
「ころして、」

もうおっさんがいない世界になんて興味ないのよ。
声を振り絞ってから最後に精一杯笑ってみせたらシュヴァーンはすぐに剣を振り上げた。
ああ、やっと終われる。

「愛してるよ」

あたしが死ぬ間際に最後に聞いたのは紛れも無くレイヴンの声で、
最後に目に焼きついたのは、レイヴンの血を浴びるシュヴァーンの姿だった。





真っ赤なプライド
(最期まで素直じゃない君)









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