きみのその瞳に、俺はもう気持ちを抑えることでさえ困難になる。






少女は知らない。
俺がどれだけ感情を押さえ込んでるのか、どれだけ君が好きなのか。

時々変な衝動で彼女に触れたくてたまらなくなる。
けど相手はまだ15の少女で、ましてや20も歳の離れた相手が手を出すのもいかがなものか、という感じで。
…なのに少女は、リタは時々ものすごく物欲しそうな顔を見せてくるもんだから、今回は我慢できなくてそのままじりじりと壁に詰め寄って、腕ごと壁に押し付けて逃げられなくした。
驚いているのか違うのか、少女は何の抵抗もせずにじっと俺を見つめたまま動かない。
その目はどこか寂しげで、時々ふるりと揺れる瞳がとても綺麗で、

「ん」

もちろん抑えられるはずもなく、そのまま噛み付くように唇を奪った。
勢いがあったからか、ごつりと少女が後頭部を後ろの壁にぶつけ、それを撫でる意味と、少し逃げ気味な唇を寄せる意味も兼ねて頭にするりと手を滑らせる。
俺から解放された少女の片方の手は、甘えるように俺の服の裾をぎゅうと掴んでいた。

(そんな可愛いことされたら止まらなくなるっての)

一度唇を放して次は違う角度から唇を合わせる、この辺りで大暴れしそうなのに、全く抵抗もせずに受け入れている。
…もしかして怖がっているのかと思い、一旦唇を放した。

「…っふ」

さすがに少し苦しかったのか、小さく息を吐き出したのがわかった。
ゆっくりと顔を覗き込むと、リタは少し涙目になっていて、顔を赤らめながら唇を拭っていた。
さすがに恥ずかしいのか、俺が目を合わせてもふいっと顔を反らしてしまう。
これが彼女らしいというか、俺にとってはそんなの煽りにしかならないけれど。
反らした顔を掴んで無理矢理戻し、お構いなしにまた口付ける。
いきなりで準備ができていなかったせいか、少し腕を掴まれて抵抗されたが、それもすぐに無くなった。
それをいいことに夢中になって、何度も何度も唇を重ねているうちに止まらなくなっていった。

「…んぅ、ん」

しまいにはもっと深くなっていって、いつしか頭を支えていた手も本能のままにリタの胸元へと滑っていく。
ここまできたら、さすがに大人しくはしていなかった。
両手で俺の胸を押して引き離そうとするが、もちろんこの体格差じゃびくともしないわけで。
足や腕をジタバタさせるが、掴んでしまえばこちらのものだ。
そうして調子にのって続けていたらついに思い切り舌を噛まれた。

「いっでぇっ…!痛…!!!!」
「…ぷはっ…はぁ…な、何すんのよ!!」

身を引いて距離を開けた瞬間腹に思いっきり蹴りを入れられた。
油断していたせいもあってそのまま後ろに尻餅を付く。
リタは息を切らしながら俺を見下ろしていて、よく見ると少し震えていた。

「悪い、悪いって!ちょっと止まらなくなっちゃったんよ」
「ば…っかじゃないの!意味わかんない!!」

最初は抵抗しなかったくせに、とか内心思いつつ、転んで痛めた後ろを撫でながらベットへと座った。
リタはというと唇を傷ができるほどごしごし拭いながら怒っている。

「…リタっちがあんな顔するからよ」

ぽそりと呟くと、その動きはぴたりと止まった。
そしてゆっくりとこちらに近づいてくる。
また鉄拳やら魔術やら飛んでくるかと思い、身構えていると、

「それはおっさんの方でしょ」

と呆れた顔を返された。

「…へ?」

もちろん何のことかわからない。
身構えの体制を解いた瞬間に頭に拳が落ちてきた。
その拍子に次はベットから転がり落ちる。

「知ってるんだからね」
「いったた…知ってるって、何がよ」
「…最近ずっと辛そうな顔してるの、知ってるんだから」

最後にばか、と付け加え、そう告げられた。
俺はリタの口から出るとは想像もしていなかったその言葉に驚いて、ベットから落ちた体制から動けないでいた。
その言葉から推測するに、最近の自分の葛藤に気付いていたわけだ。
だから何も抵抗せずに受け入れてくれていたのか。

「怖かった?」
「………何がよ」
「いきなりこんなことされてさ。」
「…別に、怖くなんかないわよ、いずれはするってわかってたし」
「嘘つけ、震えてんじゃないか。」

立ち上がって、リタを抱き締める。
一瞬びくりと肩を震わせたが、ゆっくりと頭を撫でればすぐに落ち着いた。
リタ自身も俺の背中に手を回していて、ちゃんと受け入れてくれたことにまた少し嬉しくなったりして。

「おっさん」
「ん?」
「あと3年待ってね」
「さ、んねん…」
「3年。」
「おっさん待てる自信無いわよ」
「待ちなさいよそれくらい」
「……………努力はします」
「よろしい」





愛しいよ、その震える瞳や抵抗さえも。
(我慢できる自信なんてないに決まってる)










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