全て奪い去ってしまいたいほどなのに。






この感情を伝えるつもりなんてないわ。

だってあなたにはもう、1番に目に映る人が居る。
そしてその人もあなたを1番に思っている。
いつも隣に居て、自然にお互いが笑い合えて幸せになれる、そんな人がいるのだから。
首を突っ込もうなんて思わない。
嫉妬心なんて、もううんざりで消えてしまった。
あなたを奪いさってしまいたいって、思わないわけじゃない。
けれど、あなたが幸せならそれでいいって、思っているのに。


「ジュディス」

ぼろぼろと涙を流して、目の前の少女はドアの前に立っている。
驚いてすぐに駆け寄ると自然に私へと伸びる腕。
胸に顔を埋めるようにして抱き締めると、身体を伝って彼女の泣き声が響いてくる。
久々に目にした彼女の姿なのに、こんなに悲しい顔をしているなんて。

「どうしたの、リタ」
「う…っ、う」
「どうしたの」

そっと頭を撫でていると、落ち着いたのか少しずつ泣き声は小さくなっていった。
涙でぐしゃぐしゃになった顔をそっと手で拭ってやると、触れた瞼から大量の涙が私の手を伝って流れていく。
彼女の泣いている姿なんて初めて見たかもしれない。
下手に触ると壊れてしまいそうなくらい小さくて、けれど震えている身体が私にとっては何だか愛しい。

「リタ、」
「喧嘩、したの。でも、あいつが、悪いのよ」
「うん」
「あたしは、あいつのこと、」

好きなのに。
リタの声にならない嗚咽が聞こえた。
私が知っている2人は親子のようにじゃれあっていたりとか、2人で微笑み合っていたりとか、何があっても幸せそうな表情を見せているような、そんな2人だったのに。
そう、彼女の表情や感情を左右するのは全てあの人で。
彼女の、リタの幸せそうな顔も、気持ちも、全部変えてしまうのは私でも他の誰でもなくあの人。
リタはあの人の行動や言葉1つでいくらでも変わってしまう。
それほど大切で、彼女が1番思っている人。
でも今は、そいつのせいで彼女が悲しんでいる。
何があっても涙さえ見せなかったリタが、あいつと喧嘩した、それだけでこんなになっている。
私は、彼女を幸せにできるのがあの人しか居ないと思ったから、見守っていたのに。

「大丈夫よ、リタ」

嫉妬心とかじゃない。
ただ憎くてたまらない。
ずるいわ、私の心なんてこの子に伝わるはずもないのにあなたは。
あなたはこの子を簡単に揺さぶってしまうことができるのだから。

「大丈夫よ、大丈夫」
「ジュディ、ス…?」
「私が、側にいるからね」

そう言って微笑むと、彼女は安心しきった顔を私に向ける。
うん、と返事をした彼女の頭をもう一度撫でてから、胸の中へとしまい込んだ。





たゆたう
(この気持ちと一緒に)








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