手の甲は尊敬のキス、首元は欲望のキス。





「君はどうしてユーリ達と一緒にいるんだい」

まだできあがっていないオルニオンの建物を眺めていると、ふと後ろから声をかけられた。
暗くて辺りが見え辛い中でも声の主の髪色は自然と目立つ。
そこに居たのは騎士団の姿をした金髪の青年で、あたしがその言葉に少し顔を歪ませると、困った顔をして頭をかいた。

「そんな怖い顔をしないでくれないか」
「あんたが意味深な質問してくるからでしょ」
「君ほどの人材がなぜユーリ達と行動しているのだろう、と思ってね」

あたしを褒めているのか、それともユーリ達を遠まわしに侮辱でもしているのか、その短い言葉の中からでは汲み取ることができなかった。
かと言って詮索しようとも思わなかったし、彼がユーリの友人だということを考えれば多少の軽い発言があってもおかしくはないだろうと特に気にもしなかった。

「君が帝国に必要な人間であることは君自身が1番わかっているだろう?ユーリ達と旅をするのはもったいない。その技術を我々のために役立ててほしい、だから」

僕と一緒に来ないか。
何が言いたいのか、理解するより先にフレンが動いた。
目線が合うように前へと移動すると、一礼してからその場へしゃがみ込む。
それからあたしの左手を手にとって、甲へとそっと唇を寄せた。

「…居心地がいいから、よ」

もちろんユーリ達と旅をしているあの環境が、だ。
居心地がいいのはもちろん本当で、仲間達と一緒に居ると自然に笑っている自分がいて、今もこの状況で顔が緩んでしまっているのがわかるほどだ。
その言葉を聞いて一瞬フレンの動きが止まったのと同時に手を引き戻す。
唇は触れずに済んだ。
フレンは下から見上げるようにこちらに視線を向けていた。
それをわざと合わさずに後ろを向くと、それが気に食わなかったのか足場を慣らすように軽く地面を蹴り上げる音が聞こえた。

「訂正しよう。」

地面の土がこすれる音と同時に首元に軟らかい感触を感じた。
すぐにそれは離れて、振り返った瞬間に嫌でも目が合った青年の青い瞳。
フレンが軽く自分の唇を触っていた仕草を見て、今自分が何をされたのかすぐにわかってしまった。

「…最低」
「言い訳をするつもりはない。僕は、」
「それ以上言ったって意味ないわよ」




ただの言い訳
(必要、って言葉に甘えているだけだよ)








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