赤と鼓動




「待って、待って、リタっち!」

俺は彼女に、とても嬉しいあの言葉を言ってもらった。
多分、勇気を出したとか、言おうとして言ったとかではなく、勢いでぽそりと出たんだろう。
自分の言った言葉に気付くと、顔を真っ赤にして俺の腹を一発殴ってから走り出した。
必死で逃げ回っている彼女を俺は速足で追いかける。
本当に捕まえようと思えばすぐに捕まるのだが、後ろからでも確認できる表情とか、耳まで真っ赤にしている姿とかが可愛くて、それを眺める意味も込めて追いかけていた。

「うっさい!来ないでよ、さっきのは忘れろ!」
「絶対忘れない、捕まえるまでおっさん追いかけるよ」
「来んな来んな来んな!さっきのは聞かなかったことにしろ!」
「何でよ!おっさん嬉しかったよ?」
「も、う!いいってば!」

いい歳したおっさんと小さな少女が声を張り上げて街で追いかけっこしているだなんて、周りから見たらものすごく変な光景だろう。
今も何人かの人がこちらを見て顔をしかめていたり、くすくすと笑っていたりした。
それに恥ずかしさを感じたのか路地裏の方へと逃げ込まれ、見失わないように急いで追いかけると、すぐにリタの小さな身体にぶつかる。
行き止まりだったらしく、引き返した瞬間に俺の胸へと飛び込んでくる形になったらしい。
リタはすぐにくるりと背を向けて駆け出そうとしたが、簡単に逃がすはずもなく、そのまま抱き締める形で捕まえる。

「放しなさいよ!」
「放すわけないでしょ、散々逃げ回りやがって」

暴れるリタを後ろから強く抱き締めて動きを制する。
腕をすり抜けたとしても俺の横から逃げるスペースが無いほど狭い路地裏で、行き止まりのところまで迫ってしまえばすぐにリタを追い詰めることができた。
リタの胸のあたりに回っている腕からかすかに心臓のリズムが感じ取れる。
走り回っていたせいなのか、それとも他の何かのせいなのか、どきどきと強く早く打ち付けているそれに少し嬉しくなったりして。

「言って?さっきの言葉」
「言わないわよ、あ、あんなのただの冗談だし」
「リタっちは冗談で人に好きって言えるの?」
「言わない、わよ」
「じゃあほんとなんだよね、さっきの」

赤かった顔が更に耳まで真っ赤になる。
そんな彼女が可愛くて、愛しくてたまらなくて再び強く抱き締めて、胸の鼓動を確かめる。
もう暴れる気は無いようなので、腕から開放してこちらを向かせる。
改めて顔を見合わせると、彼女の赤い顔を見て俺まで照れてしまう。
言ってみ?とアイコンタクトを送ると、彼女は迷いつつももう逃げられないと悟って、すぐに口を開いてくれた。

「す、き」

リタは今にも泣き出しそうで、けれど俺は既に泣いていて、泣き顔を隠すためにリタの肩に思い切り顔をうずめた。
恥ずかしくてたまらないはずなのにリタはしっかりと背中に腕を回してくれている。
俺もだよ、俺もだよ、と何度も呟いて、その度に彼女は背中の腕の力を強めるもんだから、ああもう。

(愛しくてたまらない)






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来栖様へ、相互記念小説です!
レイリタとのリクエストでしたが、甘さもくそもないこんなもので申し訳ありませんorz
これから同じレイリタスキーとしてよろしくお願いします…!

お持ち帰りは来栖様のみでお願いします。












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